おしゃれになるために服を買い揃えるなら、まず買うべきはボトムスです。パンツと靴で下半身の印象を整え、そのうえでトップスを替えて印象の変化を楽しむ。この順序を押さえると、手持ちの服を生かしながら、お金をかけすぎずにおしゃれへ近づけます。

「ボトムスは印象を整えるもの、トップスは印象を変えるもの」。この役割の違いを覚えてください。下半身がカジュアルなまま、カジュアルなトップスをいくら替えても、全身のバランスは整いません。まず着こなしの土台をつくるために、パンツと靴を先に揃えるのです。

トップスは「変える」、ボトムスは「整える」

トップスとは、Tシャツやシャツ、ジャケットなど、上半身に着る服のこと。ボトムスはパンツなど、下半身に身につける服です。ここでいう「下半身を整える」には、パンツに合わせる靴まで含めて考えてください。

服を買おうと思ったとき、多くの人はトップスを探します。顔の近くにあり、人の視線が集まりやすいため、トップスには着る人の雰囲気や着こなしの方向性を変える役割があります。シャツの色を変えたり、ジャケットを羽織ったりすれば、全身の印象ははっきり変わります。ただ、印象が変わったからといって、おしゃれに見えるようになったとは限りません。

例えば、Tシャツにデニムとスニーカーを合わせ、全身がカジュアルに傾いている場合。トップスを同じようにカジュアルなものへ替えても、雰囲気が変わるだけでドレスの要素は増えません。そこでパンツと靴をドレス寄りに整えれば、いつものTシャツを使いながら、全身の「ドレスとカジュアルのバランスを7:3」に整えることができます。上半身を替えるだけで終わらず、下半身も含めてバランスをとることが必要なのです。

ボトムスが担う「整える」とは、パンツと靴で下半身の形や大人っぽさを整え、上半身に着る服を生かせる状態にすることです。ここが決まれば、いつものTシャツやパーカーも、着こなし全体の中で格好よく見せやすくなります。

3分割コーディネート法が、ボトムス優先の理由を教えてくれる

では、下半身をどう整えれば、手持ちのトップスを生かせるのでしょうか。その理由と方法をつなぐのが、前節で説明した「3分割コーディネート法」です。

全身を「トップス」「パンツ」「靴」の3か所に分け、そのうち2か所をドレス寄り、1か所をカジュアル寄りにする。そうすると、大人っぽさと気軽さのバランスを、基本の「ドレス7:カジュアル3」に近づけやすくなります。

この分け方では、トップスは全身の1パート。一方、パンツと靴を合わせた下半身は2パートを占めます。つまり、下半身を整えることは全身の2か所をまとめて調整すること。トップスだけを替えるより、全体のバランスを整えるうえで比重が大きいのです。

ここで、手持ちのトップスを思い浮かべてみてください。Tシャツ、パーカー、デニムシャツなど、カジュアルな服が多いのではないでしょうか。それらを生かすなら、残りの2か所、つまりパンツと靴にドレスの要素を持ってくればよいわけです。

例えば、カジュアルなデニムシャツに、街着用のスラックスと革靴を合わせる。上半身のラフさは残りますが、下半身の2か所に大人っぽさが加わるので、全身のバランスをとりやすくなります。

「下半身をドレス寄りに整えると、手持ちのトップスが生きる」とは、こういうことです。パンツと靴で2か所を整えておけば、上半身にはカジュアルな服を使える。だから、新しいトップスを次々に探す前に、まずボトムスを揃えることを勧めています。

もちろん、3分割コーディネート法は、印象を大まかに捉えるための方法です。スラックスと革靴を使えば、正確に全身の何%がドレスになる、と計算できるものではありません。一着ごとのデザインや形、色と素材によっても印象は変わります。まずは「2か所をドレス寄りにする」と考え、着た姿を見て調整してください。

先に買うのは、手持ちのトップスを生かせるパンツと靴

買い物では、この順序をそのまま使いましょう。下半身が整っていないなら、最初に揃えるのはパンツと靴です。シャツやジャケットをもう1枚買うのは、その後で構いません。

ここでいうスラックスは、仕事用スーツのパンツをそのまま流用する、という意味ではありません。量販店の仕事用スーツには、動きやすさを優先し、パンツの形のメリハリが弱いものもあります。スラックスという種類だけで選ばず、街着としてはいたときの形まで確かめてください。

トップスを選ぶこと自体が間違いなのではありません。ただ、おしゃれを始める段階でトップスばかり無暗に増やしても、土台となる下半身が変わらなければ、全身の印象は整いにくい。先にパンツと靴を揃えれば、すでに持っている複数のトップスを生かせます。これが、なるべくお金をかけずにおしゃれを目指すうえで、ボトムスから買うほうが早い理由です。

全身を一度に買い替える必要はありません。まず、いつものTシャツやパーカーを着たまま、ドレス寄りのパンツと靴を合わせてみる。上半身を変えずに比べると、下半身を整える役割がつかみやすくなります。

下半身の組み合わせが決まったら、今度はトップスを替えてみてください。整った土台を使いながら、上半身で雰囲気を変える。この段階で、トップスを選ぶ楽しさも生きてきます。

パンツは、靴と合わせた形まで見る

ボトムスから整えるというルールは、どんなときも細いパンツをはく、という意味ではありません。細身にもワイドにも選択肢があります。見るべきなのは、そのパンツが全身の中でどんな役割を果たすかです。

例えば黒いウールのワイドスラックスなら、幅のある形にはカジュアルな要素があり、スラックスというデザインと、黒い色、ツヤのある素材にはドレスの要素があります。太いからすべてがラフ、とは判断できません。前節の3要素で見分け、全身として大人っぽさが残るかを確かめましょう。

靴も同じ3要素で見ます。スニーカーなら、デザインはカジュアル。シルエットは、ボリュームがあればカジュアル寄り、細くすっきりしていればドレス寄りです。色と素材では、黒やツヤのある革を使っていれば、そこにドレスの要素があります。スニーカーという名前や、ボリュームの有無だけで、靴全体の印象を決めないでください。

例えば、細身で黒いレザースニーカーなら、デザインはカジュアルでも、形と色・素材にはドレスの要素があります。反対に、ボリュームのある形なら、その形が全身にカジュアルな印象を加えることも考える。パンツと合わせる際は、こうして靴のドレス度を確かめたうえで、下半身の形と全身のバランスを見ていきます。

靴のわずかな形の差で、パンツの見え方まで変わることがあります。「このパンツが似合わない」と決める前に、足元も替えてみる。ただし万能な靴があるわけでもありません。下半身の組み合わせを、上半身まで含めた全体の中で判断してください。

整え方を知ると、パンツ選びも楽しくなる

僕自身、もともと少し変わったパンツが好きです。股ぐりが深く垂れ下がり、裾に向かって細くなる独特なシルエットをしたサルエルパンツや、切り替えの入ったもの、思い切り幅の広いもの。慣れてきたら、パンツに個性を持たせる楽しみ方もあります。

大胆なデザインや形をパンツに取り入れる人は、トップスに取り入れる人ほど多くありません。だから周りとの違いをつくる選択肢になります。もちろん最初から難易度の高いパンツを勧めているわけではありません。あくまでルールに則ったうえで応用として楽しんでいるのです。

まずはパンツと靴を揃え、手持ちのトップスが生きる下半身をつくる。そのうえで印象を変えたり、好みを加えたりして楽しみを広げる。「整える」が先にあるからこそ、「変える」ことが着こなしの幅につながります。

なお、これは買い揃えるときの優先順位です。毎朝、必ずパンツから服を選ぶという決まりではありません。人と会う日は、相手や場所にふさわしいトップスから考えることもあります。何を買ってもサマにならないと感じたときには、まずボトムスへ戻ってみる。そのためのルールとして使ってください。

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